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オブセオルタナティブ2013AVECは、企画初動当初から、トポスという場所の検証の横に、様々な多様性を接続させるという性格を軸に進行した。作家自身であってもサポートする側であっても、あるいは賛同参加される側であっても、当該企画の磁場のようなものを強化しつつ同時に促されるという展開を、むしろ好ましい進捗と、各位が受け止めることで成立している。
 本来ならば、キュレーション依存、あるいは作家主体のプロジェクトが、その責任において粛々と進行する従来型芸術プロジェクトを一旦解体し、関わる人間すべての立ち位置を一度フラットに平等化させ、主役である作家作品の表出に対して、均一な責任と歓びを享受するプロジェクトとさせる為に、スピンオフ的なものでっても同じ土俵に併置することで、むしろ当該プロジェクトの意味合いが拡張する手応えはある。

 非公開のインスタレーションの設置という作家側にすればリスクのある試みを松田朕佳はひとつのトレーニングも含む試験的な展開と受け止めた。これを撮影した写真作品の制作自体が自らの作品と成ることを作家に従属したお抱え記録担当ではないスタンスで行うことが可能だと自らをプロジェクトに丸山玄太は位置づけた。これがオブセオルタナティブのはじまりにあり、インスタレーションを行う場所として小布施都住の花井裕一郎氏宅倉庫(旧きのこ工場)を、その現場として使用許諾をお願いし、倉庫代わりに使われていた空間の片付けから開始し、多くの方の協力を得て松田朕佳インスタレーションを設置。数回に渡る撮影(松田パフォーマンスも含む)の後、ソングライターの堀内彩花がこの空間でオリジナル楽曲を唄うPV撮影を行い、後日これはDVD販売される。丸山玄太写真作品は全て、フォトギャラリーポスターペーパー「メノオト」創刊時に開発開始された梅田版画工房主宰梅田明雄氏によるUAO(梅田大人の出力)にて出力され、作品は、FLATFILE(モリヤコージ)オリジナル鉄フレーム(樋口工業発注品)UIFにて額装されて販売される。つまりひとつの丸山玄太写真作品売却益はふたりの作家と出力担当の梅田氏、額装のモリヤ氏に配布される。
 松田朕佳のインスタレーションは、丸山玄太写真作品として遺り、その作品はいわば多くの関係者のセッションによって成立している。
ソングライター堀内彩花の参画も、インスタレーションの空間の機能性と可能性を問うものとなり、同時に音楽系と視覚芸術系との交錯の試論として今後、様々な展開が予感される。
 同期するマツシロオルタナティブの、美術館機能拡張利用を相対的に俯瞰すれば、芸術の多様性がもたらす可能性と場所の活性のヒントが多く見いだせる。

 松田朕佳は準備期間中NIPAFアジアツアーを敢行し、兵庫や名古屋での活動も重複している。丸山玄太は9月からのトポス高地個展を控え当該企画と平行して準備している。梅田明雄氏もリトグラフ摺師として連日の激務の夏を過ごしており、FLATFILEモリヤ氏も同様。他、関わる人間すべて忙しく時間の無い中で仕事をしていただいて感謝に堪えない。けれども、個人的には目が回るほど忙しくしている仕草のほうが余程人間の本質的なものが率直に顔を出すものだから、時間をかけてじっくり慎重になどという諧謔や皮肉や悲観が生まれる隙をひねり潰すにはよい状況なのだと、これをよしとして考えた。

文責 町田哲也 / 計画者

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